安全保障、国民巻き込んだ議論必要 武力によらない道筋を…憲法や軍縮の専門家らが安保3文書の対案提言へ https://www.tokyo-np.co.jp/article/219484/2
2022年12月13日 06時00分
◆「軍縮は弱腰でなく現実的に安全」川崎哲氏に聞く
非政府組織(NGO)「ピースボート」の共同代表で「平和構想提言会議」の共同座長に就任した川崎哲氏に、政府の安全保障政策の対案となる提言を発出する意義を聞いた。 (柚木まり)
—政府の「国家安全保障戦略」など3文書改定への対案を出す理由は。
「ロシアのウクライナ侵略で多くの人が危機感を抱いていることに乗じて、自民党が主導し敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の倍増、殺傷能力のある武器の輸出を解禁するような方針を出したからだ。
戦後憲法の平和主義の原則に明らかに反している」
—国際社会で核廃絶や軍縮を市民の立場から訴えてきた。
「国家間は関係性が物を言う。一方の国が軍事力を増強すれば、もう一方も同様にするのは当たり前。
私たちが軍縮を訴えるのは、弱腰なのではなく、その方が現実的に安全だからだ。抑止力や威嚇によって平和が作られるという前提に立つ政府・与党の方が、冒険主義的で非常に危険だ」
—外交や対話による安全保障への転換を訴える。
「本当の安全保障とは何か。コロナ禍や物価高の今、高齢者や困窮者ら取り残される人たちが多くいる。平時の今ですら人々の命を支えきれないのに、防衛費を増やせば有事に対応できるという政府・与党の考えは現実離れしている。軍事力中心の一面的な考え方から脱却すべきだ」
—敵基地攻撃能力の保有は、戦後の安全保障政策を大きく転換する。
「あまりにも国民を巻き込んだ議論が少な過ぎる。今の状況で防衛力増強のためには増税が必要だと言えてしまう人の感覚は、多くの国民の支持を得られるだろうか。
憲法に基づく専守防衛を事実上ほごにし、日本が他国の脅威になるかもしれないことは本当に危険なのだと世論に訴えたい」
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「戦争を回避せよ」安全保障で民間提言相次ぐ 政府の防衛力強化に
申惠丰(シンヘボン)・青山学院大教授(国際人権法)は、軍事支出とは対照的に低水準にある日本の教育支出に触れた。経済協力開発機構(OECD)によると、19年のGDPに占める教育機関への公的支出の割合は2・8%で、データのある加盟37カ国の中で下から2番目。申教授は「日本は武器ばかり買い込んで、人を育てる意味では、どんどん先細りしていく国になろうとしている。多くの有権者が本当に結果を引き受ける覚悟があるのか。『自分ごと』として考えなければいけない」と問い掛けた。