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書籍紹介「甘いバナナの苦い現実」と「甘いバナナの苦い真実」に関する3回連続オンライン講座のお知らせ

甘いバナナの苦い現実

P21 「バナナと日本人」が投げかけた問い

鶴見良行著1982年「バナナと日本人」(岩波新書)出版

フィリピンの農民が自分たちの食べないバナナを輸出用に栽培する.。しかも、農民や、バナナ園や梱包作業所で働く労働者、箱詰めされたバナナを船に積む港湾労働者は、定収入・低賃金から抜け出すことはできない。広大なのうちがバナナの単作に転換され、有毒な農薬が農民の健康をむしばむ。農作業が細かく分けられあたかも工場のように生産管理が行われ、自然のリズムを壊していく。「バナナと日本人」はこうした問題を指摘した。

P24 あれから40年、いったいこの間、何が変化し、何が変化しなかったのだろうか。そして、今、バナナが私たちに投げかける問いは、何であろうか。

P28  バナナのブランド化とパッケージ化開発の進展…..たとえば「高地栽培バナナ」に対して、低価格であった低地栽培バナナが「低糖度バナナ」として、ダイエット向きに商品化。

P29   私たちの食を選ぶ権利は大企業に支配され、狭められている傾向にあるのではないだろうか?

p31   自分たちの生活の豊かさや安全を確保するためにリスクを他者に押しつけるあり方は、バナナだけではなく、原子力発電所や米軍・自衛隊基地にも通じる問題である。変化しつつも40年以上も解消していないバナナ生産地の問題にいま一度向き合うことを通じて、他者にリスクをおしつけないライフスタイルとは何かという問いの答えをさがしていきたい。

と石井正子さん他の著者が語りかけます。

APLAがアジア太平洋資料センターと共催で、10月2日、5日、7日、各回19〜21時に『甘いバナナの苦い真実』に関する3回連続オンライン講座を開催。フィリピンから農薬の専門家などにも登壇予定
APLAのウェブサイト※全回参加費無料

 

石井正子編著、アリッサ・パレデス・市橋秀夫・関根佳恵・田坂興亜・田中滋・野川未央著
四六判、388ページ 本体価格=2500円+税
ISN978-4-86187-167-2 C0036 8月刊行予定

日本人がもっとも多く食べている果物バナナ。安さの一方で、主な輸入先のフィリピン・ミンダナオ島では、農薬の空中散布による健康被害や不公正な多国籍企業の活動が目立つ。栽培・流通の知られざる現状を調査に基づいて詳細に描き、倫理的な消費の在り方を問いかける。

目次

序 章 そんなバナナ!?――意外と知らないバナナの話 石井正子
一. 意外と知らないバナナのこと
二. フィリピンの人たちが食べているバナナ
三. バナナから見えてくること
四. 『バナナと日本人』が投げかけた問い
五. 21世紀にバナナが投げかける問い

第1章 ミンダナオ島で輸出用バナナが作られるようになるまで 石井正子
一. なぜミンダナオ島で広がったのか
二. スペインの植民地化に抵抗した南部、植民地化された中北部
三. 独立を前提としたアメリカ植民地統治――地主エリートによる支配の始まり
四. ミンダナオ島への移民入植
五. 日本軍政期の影響
六. 独立からマルコス政権期――輸出用商品作物の生産拡大

第2章 フィリピンでバナナはどう作られているのか
1 バナナ栽培に関わる企業と人びと――農地改革後の変化 石井正子
一. 包括的農地改革法の制定
二. 栽培契約とリース契約
三. 多国籍企業の変化
四. 地場農園の変化
五. アグリビジネスと契約する生産者の変化
六. 栽培契約とリース契約の問題点
七. アグリビジネスによる低農薬栽培バナナ
八. 輸出用バナナ産業の多角化と拡大

2 「高地栽培バナナ」の発見と山間部の変化 アリッサ・パレデス
一. 高地栽培バナナの出現
二. 販売方法の変化と架空の栽培地
三. より高く甘いバナナのより苦い現実
四. 高くて甘いバナナが忘却するもの

第3章 バナナ産業で働く人たちの現実
1 輸出用バナナ産業の周辺で――収穫、梱包、運搬、廃棄バナナ利用 石井正子
一. 数字にみる概要
二. バナナ園での仕事
三. 優良産業の数字には現れない労働者の実態――二つのアグリビジネス
四. 農園から港まで――バナナ園の外での仕事
五. 規格外バナナのゆくえ

2 正規雇用を求める労働者の闘い――スミフル農園の梱包作業所 田中滋
一. 日本のNGOの調査開始
二. 梱包作業所の不当労働
三. 法律を遵守しないスミフルと闘いを続ける労働者
四. 日本の市民・NGOがしてきたこと、これからできること

第4章 バナナ園の農薬散布――毒か薬か
1 バナナをめぐる農薬問題 田坂興亜
一. フィリピンのバナナ園で使用されている農薬
二. バナナに残留する農薬と子どもたちの健康への影響
三. 農薬散布がバナナ園周辺住民の健康に及ぼす影響
四. 子どもたちに安全な食環境を残す

2 フィリピンの農薬空中散布反対運動 アリッサ・パレデス
一. 農薬カクテル
二. 日本人の食のために代償となる命
三. 農薬の空中散布に反対する運動
四. バナナ王のお膝元で
五. 人間が大切にされていない

第5章 多国籍アグリビジネスの再編と新たな「規制」枠組み 関根佳恵
一. 多国籍アグリビジネスとバナナ
二. 多国籍アグリビジネスによるバナナビジネスの形成と再編
三. 多国籍アグリビジネスの新たな戦略――オルタナティヴを「盗用」する
四. 新たな「規制」枠組みの構築

第6章 バナナが食卓に届くまで――サプライチェーンの徹底解剖  市橋秀夫
一. バナナのサプライチェーン
二. バナナはどう輸出されているのか
三. バナナはどう輸入されているのか――保税地域内での工程と輸入業者
四. 追熟加工は誰がどう行うのか
五. 国内流通の短縮効率化と寡占化――卸売市場からコールドチェーンの確立へ
六. 小売店から消費者へ――ブランディング(ブランド戦略)と量販店
七. 誰にどれだけの取り分があるのか――バナナ価格の構成を見る

第7章 私たちはどう食べればよいのか――
1 公正な民衆交易を目指して 市橋秀夫
一. 日本でバナナの民衆交易が始まった
二. 新自由主義のもとでの民衆交易/フェアトレードの変容

2 エシカルな食べ方へ 野川未央
一. オルタナティヴなバナナの現状
二. 多国籍バナナ企業を変えるために
三. エシカルな食べ方へ

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::以下 ゆっころんのメモ

第2章 フィリピンでバナナはどう作られているのか 

1 バナナ栽培に関わる企業と人びと――農地改革後の変化 石井正子
四. 地場農園の変化

P91   ラパンダイ農園は、1990年代に、毒性学が専門のフィリピン大学のロメオ・キハノ教授が行った農薬禍の調査により注目されたことがある。中村(2008)によると、キハノ氏が南ダバオ州ハゴノイ町アプラヤ村カムクハーンのラパンダイ農園を調査したところ、約150世帯の700人に農薬による」健康被害の症状が認められた。農薬散布者には十分な防具が支給されていなかった。

だが、こうした告発にもかかわらず、状況は改善されないばかりか、キノハ氏は脅迫を受け、調査に関わった者数名が2003年に名誉毀損の罪で逮捕された。当時、ルイス・”チト”・ロレンソ・ジュニアは農業省長官であった。

(ロレンソ家は、ドゥテルテ大統領一家とも近しい関係にある。ドゥテルテ大統領の娘でダバオ市長のサラ・ドゥテルテの夫は、ラパンダイ社の顧問弁護士を務めている)

P92 アグリビジネスの変化として注目すべきは、フィリピン系資本の参入拡大である。それらは、タデコ社やラパンダイ社のうように、財閥であり、一族が地方政治や国政に大きな影響力を持つ。司法手続きを有利に運ぶ事ができ、反対勢力に対しては警察や暴力集団を動員できる。

第2章 フィリピンでバナナはどう作られているのか
五. アグリビジネスと契約する生産者の変化

P93 自立の道を歩むチェッカード農業協同組合

北ダバオ州パナボ市にあるチェッカード農業協同組合は、農地改革前はドール系列の農園であった。チェッカード農業協同組合を96年に設立。ドール・スタンフィルコ社との栽培契約を結び、輸出用のバナナの栽培を継続した。

実はドールは土地分配時に、自分たちに都合のいい御用組合を作ろうとした。これに対し、ファームコープが受益者自身による共同組合のお立ち上げを応援した。ファームコープは、1995年に農地改革の受益者を支援するために設立されたNGO。(バナナ園の農地改革の受益者の多くは、元農業労働者であるため、アグリビジネスと契約を結ぶうえでの法律の知識や融資の受け方、農園経営の知識がたりない。そのノウハウを受益者が得ることの支援を行っている)

しかしドール・スタンフィルコ社との栽培契約では自立の道を歩むことはできなかった。…..その後より好条件の契約をもとめユニフルティーとの栽培契約に切り替えた。交渉にあたっては、ファームコープの支援を受けた。

P97  好条件を獲得するのは、協同組合メンバーの合意形成ができるかが鍵となる。アグリビジネスはこの課程で御用組合をつくり、メンバーの分断を図ることがあった。

六. 栽培契約とリース契約の問題点

P106    2004年に南コタバト州ラコノン村のティボリ村のティボリ人の住民は、フォリピ系資本のソリアノ財閥のAMSグループ会社と25年間のリース契約を結んだ。

そのご借り主がスミフル(日本の商社)に変更になった。

ところが2017年11月、ティボリ人の地権者たちがピケを張り、スミフルに抗議をする事件が起こった。リース代が毎年分振り込まれていない、医療補助や奨学金が十分に提供されていんまい、バナナ1箱pあたりの手当が支払われていない、などが理由である。(アジア太平洋資料センター制作・発売DVD[甘いバナナの苦い現実」参照)

P107 リース契約においては、安いリース料、長い契約期間に加えて、地権者は自分の土地の裁量権を一切失う。企業の設備投資代が地権者負担とされ、リース代から差し引かれるなど搾取の例も報告されている。10~30年の長い期間中、農薬を継続使用した単作が行われるため、契約期間後には、土地がすっかりやせ細る。

ミンダナオ島では、先住民の生活水準や教育水準は低く、困難な状況におかれている。子どもの学校教育や医療費に現金収入が必要であるなか、リース契約は魅力的な選択肢にみえる。

それゆえに、英語で書かれた契約書の内容を十分に検討できないまま、口約束を信じて、契約書にサインすることがある。キノハ教授は、高地での農薬空中散布は対象となるバナナ農園だけではなく、水系を汚染するため、深刻な問題に発展すると警告している。

2 「高地栽培バナナ」の発見と山間部の変化 アリッサ・パレデス
一. 高地栽培バナナの出現

高地栽培バナナは、ダバオ市郊外のカリナン地区のマヌエル・ギアンガ村にあるプランテ^ション・ワンと言う農場で発見された。

なつかしい台湾バナナの味 1960年代に至るまで、日本では上流階級以外の庶民は、入院中などの病気の時に台湾バナナを口にするのがやっとであった。…バナナ輸入組合の創設に関わった清水信次氏は、サラリーマンの平均収入が1万~1万5000円程度であった57年ごろのバナナは、5~6本で250円一房あたり5000円にも相当する価格であったと回想。

三. より高く甘いバナナのより苦い現実

p144   スマトラ島のゴム、タバコ、アブラヤシのプランテーションを調査した人類学者アン・ローラ・ストーラーは、プランテーションの進出とは「機会をもたらす侵略である」という。

第3章 バナナ産業で働く人たちの現実

2 正規雇用を求める労働者の闘い――スミフル農園の梱包作業所 田中滋
一. 日本のNGOの調査開始

2018年10月4日ダバオ市のニュースサイト「ダバオ・トゥデイ」に、スミフル社に関する記事が報じられた。スミフル社の労働者らがストライキに踏み切ることで、同社系列の大部分がマヒしたというのだ。

一週間後、続報を読んだ。記事によるとフィリピン国軍や警察に連れてこられた「所属不明の男たち」がストライキに参加した労働者らに暴行を働き、少なくとも7人が負傷。「日系企業に忖度して、国軍や警察が暴力行為を働いたのだ」と直感した。

現地で一緒に行動するパートナーNGOのFoE Japanと相談、調査日程が決まり出した11月1日、現地時間10月31日の夕方にストライキに参加している労働者ダニー・ボーイ・バウティスタ氏が射殺される事件があったと報道された。

2018年12月14日、ミンダナオ島北部での鉱山地帯の調査を終えてダバオ市へ。コンポステラヴァレー州のコンポステラ町に到着した時には、労働者が話しを聞いてほしいと100名以上が集まるはずだった組合事務所兼組合代表宅が放火され火がくすぶっていた。

著しい低賃金

労働者に不利な、圧縮された週労働時間制度

給与計算は適正か

悪質な偽装請負

労働者は「スミフルの社員である」と証言しているが、会社側の見解は異なる.仲介機関によって運営されており、その社員であるという。作業所には「スミフル」の看板が設置されており、作業所内の安全配慮をよびかけるポスター、作業所内で使われるエプロンやヘアネットという備品などいたるところにスミフルのロゴが添付されているからだ。そしてスミフルブランドのバナナを出荷している。

事実上の雇用関係煮ありながらも、仲介機関の社員であるとすることで、スミフル社内労働組合を設立させなかったり、現地法人であるスミフル・フィリピン社の正社員と同等待遇での雇用を回避したりしている。これらは悪質な偽装請負である。

三. 法律を遵守しないスミフルと闘いを続ける労働者

最高裁が偽装請負であると判断

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